ネタもサービスも最高ですがお値段も最高。
第二はこれも言わずもがなの築地。
ネタの鮮度は最高で、値段もその辺の寿司屋と変わらないと来ている。
この二ヵ所はおおかた、あと50年はランキングの入替えが無いでしょう。
では、「第三位は?」と聞かれると困る方が多いのではないでしょうか。
店舗単位ではうまい店はそこらじゅうにありますが
地域で、と考えるとある程度のレベルの店が密集していないといけない。
私の経験で行くと東京で第三位の寿司のうまい地域は
JR京浜東北線の「大森駅」周辺。
試しにGoogleで「大森 寿司」と検索してみてください。
大森駅を中心に半径800mで
Googleマップに登録されているだけで75件!!
Googleマップに載っていないカウンターのみ5席程度の店や、
立ち食いの店まで含めると、私が知る限りこの範囲に100件はあるはず。
なんでそんなことになっているのか?
大森にはその昔、平成元年まで魚河岸があったのです。
第一京浜国道の平和島近辺、現在は大森スポーツセンターという
区営施設が建っている場所がそこです。
魚河岸が近いと言うことは自然発生的に寿司屋が増えるという
日本ではほぼ常識的な発想で考えてもちょっと多すぎやしないか?
それに魚河岸が大井埠頭の大田市場に移転してから20年。
もう淘汰されて店舗数も減ってきてもいいはずだと思います。
実は大森に寿司屋が多い理由はもう二つあります。
一つは公営ギャンブルが最寄に2つ、競艇と競馬があること。
公営ギャンブルに行くのにお金を持って行かない人は少ないですし
多少なりとも儲かれば鮨ぐらい食いたくなります。
ギャンブルが地元にお金を落とすことを裏付けるかのごとく
実は焼肉屋もかなりの数があります。
そしてもう一つは東京観光の外国人の
宿泊基地になっていると言うことです。
成田から東京ディズニーランド、秋葉原を経由して
羽田から北海道へ行く、と言うのが最近の外国人のツアーパターン。
羽田から飛行機に乗る前日に大森に宿泊というのが非常に多く
周辺にはホテルが多い。
この観光客が日本食、すなわち寿司を食いに街に繰り出すのです。
この狭い範囲に大量の寿司屋があるのですから
競争も激しいので技術もネタ質も向上する。
その上、大田市場と築地の2箇所の仕入れルートがあるので
他の地域に比べても良質のネタを安定的に仕入れることができる。
地代が安いので銀座に比べるとかなり安いし
築地辺りと比べても季節によっては安い場合もある。
偶然の重なり合いで、寿司がうまくなる条件が揃ってしまっている
それが大森の寿司屋なのです。
大森にはJRを挟んで東と西、もっと詳しく言うと南東と北西で
大きく街の雰囲気が違います。
それに合わせるかのごとく寿司屋の雰囲気も変わってきます。
南東側はそれこそ元魚河岸があった場所や競艇場方面なので
寿司屋も威勢がいいと言うかにぎやかしいというか、そういう感じ。
こちら側でのお勧めはいさ美寿し。
にぎやかしい南東側でも地下に入っていくお店なので
わりと落ち着いています。週末は近所の日立やいすゞの方々が
宴会をやっている場合が多いので、これを避けるためには
平日か日曜日がいいでしょう。
特に日曜日はネタの鮮度はイマイチかもしれませんが
回転寿司並のどれでも1カン70円とかなりお徳。
こういうイベントも大森っぽい感じです。
北西側は山王という高級住宅地を控えているので
かなり落ち着いた雰囲気が魅力です。
慌しくなく、ゆっくり寿司を味わいたい方にはこちらがいいでしょう。
北西側のお勧めは美家古寿司。
住宅街の真ん中の路地にあるので多少見つけ難いかもしれませんが
味はピカイチ。銀座の中級クラスには決して負けません。
マスターも寿司屋にしては物腰が穏やかで
ご夫婦でふらりと立ち寄っても落ち着いて寿司を味わえます。
実はこの美家古寿司、味と価格の両面から
私の東京寿司屋ランキングトップ10に入っているのです。
お勧め以外にも大森の寿司屋は、その膨大な店舗数により
かなりバラエティに富んでいます。
概してマイナーと言える大森に
寿司を食うだけのために行くというのも
かなりディープでマニアックな感じで面白いですよ。