前日の雪がまだ残る富士スピードウェイ
グランプリコースのピットロード。
ここに、これから過酷なレースを繰り広げるマシンたちが
一斉に整列する。
スーパーママチャリグランプリ(第2回 ママチャリ日本グランプリ)が
ここ富士スピードウェイ グランプリコースで開催され
今年も懲りずに参戦をしてきたのである。
この競技会、「ママチャリグランプリ2008シリーズ最終戦」と
「極寒チーム対抗7時間耐久ママチャリ世界選手権」のサブタイトルがつく。
2008年度シリーズ全3戦の最終戦で
前の2戦はカートコースで行われ
最終戦がこのグランプリコースで戦われるのだ。
また、ママチャリという規格自体、
日本の道路交通法が偶然産んだ独自のものであり、
世界選手権というのもあながち大げさではない。
そして、極寒ということだけは間違いない。
どちらかというと「極寒!!」と表記してもいいのではないか
とも思うのだが。
そんな、イベントタイトルだけでくじけそうなこのレース、
昨年を上回る1049チームが参加。
かなりの大盛況で、入場の混雑を緩和するために
前日の夜9時から会場をオープンするなど
サーキットイベントとしてはかなり異例なことだらけ。
異例といえば、昨年同様パドックエリアではバーべキューOK。
あちこちから肉や鍋の匂いが立ち上がる。
私たちのチームも負けじと豚汁鍋を用意した。
日の出前からの極寒の中、
入場、準備をした身には暖かい汁物はありがたい。
今回のチーム編成を軽く説明すると
前回、マシン製作をお願いした痛車チーム「AKIBA Spec」が
参加チームとしてエントリー、そこに合流させていただく
というかたちでの参戦となった。
このチーム、前回以上に国防公務員の増員をし必勝体制
我々がどこまで足を引っ張らないかが肝となるのだが・・・。
今回、用意したマシンは前回の教訓を生かした
上り坂重視のセッティング。
前回の6段変速では一番遅いギアと一番速いギヤの
2種類しか使っていないことがわかっているので
つなぎが一段だけの内装3段変速。
しかし、変速機構含め全てが中国製というこのマシン、
信頼性に若干の不安が残る。
スポンサーである美少女ゲームメーカー
ABHARとClochetteのロゴ、
そして編集の方がメンバーとして参加したので
新潮社の自動車雑誌「ENGINE」のロゴが貼ってある。
スターティンググリッドは「気合順」で決定する。
コースオープンの合図の後、以下に早くグリッドに着くかが勝負。
1000台以上のママチャリが我先にと場所を奪い合う姿には
ママチャリといえども過酷な戦いになることを予感させるに充分だ。
サーキットでスターティンググリッドといえば
キャンギャルが華である。
この時点でまだ気温が氷点下であるにも関わらず
この姿でチームを応援する根性は
他のチームであっても尊敬に値する。
こちらは大会の正式レースクイーン。
昨年には無かったサービス。
このレースが盛り上がってきた証拠だろう。
そしてわがチームのスターティンググリッド。
ピットボードにはスポンサーである美少女ゲームメーカー
ABHARとClochetteのキャラクター、
そしてわかる人にはわかるであろう
「最後尾ではありません」の表記。
スターティングライダーは国防公務員君だ。
午前8時40分
いよいよスタートが切られる。
ピット上の大型ビジョンには第1コーナーへ突っ込んでいく
総勢1000台以上のママチャリが映し出された。
その数のすごさは圧巻である。
日も出て、コース上も凍結はなくなったと思われていたが
脇のほうはまだまだ凍っている。
その上、第一コーナーはかなりスピードが乗る上に
曲率がきついので、速いチームほど転倒の確率が高い。
2周目には早くも救急車が出動した。
ママチャリごとき、となめていると手痛いこととなる。
参加者によっては、これは立派なエクストリームスポーツなのだ。
とはいえ、1000台以上も参加しているのだから
趣向をこらした面白い参加者も多数いる。
戦隊ヒロイン風
消防隊は消防車風デコレーション。
初音ミクもネギを振り回しながら走る。
ママチャリならではのファミリーな風景も。
子供たちが乗る自転車に限り、ママチャリである必要が無いので
大人を凌駕する場面も多い。疲れを知らないというのがうらやましい。
そんな中、我が「AKIBA Spec」チームの
やる気漲り過ぎな全速力スタイル。
上体を低く保ち、スピードを安定させるためにカゴを持つ。
このスタイルは上位集団では定番である。
優勝チームもこのスタイルだ。
この日は特に風が強く、風の抵抗を減らすという意味でも
このスタイルは有効であるが、
どうしても上体が起きてしまう上り坂では
向かい風の影響で思うように前に進むことが出来ない。
私も、昨年は1周12分ほどであったラップタイムが
18分まで落ち込む。この差はすべて上り坂の向かい風の影響だ。
この向かい風の影響か、規定周回を終えてピットに帰ってくる
どのライダーもすっかりバテている。
順調に周回を重ねていた我々だが
残り時間2時間となったところでアクシデントが勃発。
なんと、走行中にペダルが外れてしまったのだ。
作業ができる場所はピットロードと
ヘアピンに作られた特設ピットのみ。
ヘアピン手前500mほどのところでのアクシデントだったので
ヘアピン特設ピットまで押して来ることになった。
連絡用の自転車から部品を移植しての再スタート。
リタイアという最悪の状態は免れたが、
やはりここは戦場であるということを
再認識させられる場面であった。
7時間経過の午後3時40分。
風の影響やマシントラブルもあったりはしたが
転倒などによる怪我なども無く、最終ライダーが無事にゴール。
この長い戦いを無事に走りぬいた。
そんな楽しさと達成感をともに味わったメンバー達。
なお成績は272位、周回数26周。
しかし、順位などを問題としない達成感がチーム内、
そして大会参加者の中にあふれている。
きっと、その達成感を求めて来年もここに集まるだろう。
少なくとも私たちは次も、この日のここに立っている。