飛ばしてます。年間販売目標が3000台だったはずなので
発売前からすでに1年待ち覚悟という状況。
海外割り当ての実数をどのくらい考えているかは
さっぱりわかりませんが、仮に2000台としても合計5000台。
単一車種でフェラーリ全社の生産台数を抜くというのも
スーパーカーとしてありえない数字です。
480馬力で800万円という数字だけはかなり魅力的ですが
それを超えたナショナリズムのようなものが
日本国内での大量受注につながったのだと考えます。
ガチンコ対決でポルシェターボやBMWのM5、メルセデスE63AMGと
渡り合える性能はかなりナショナリズムを刺激します。
ただ、海外勢の同程度の性能を持つクルマたちと比べると
明らかに質感が劣るのは否めません。
海外勢はあるヒエラルキーの下に
高出力車は高級素材で仕立てるという律を持っていますが
GT-Rはその律を全く無視して性能に特化した。
これに似た事例が時計にもありますね。
GSでもクレドールでもない素のSEIKOスプリングドライブ。
ケーシングや文字盤はかなりの酷評でしたが精度はピカイチ。
ゼンマイ駆動の高精度の時計は高級という律を
スプリングドライブで破ってきたわけです。
スプリングドライブの調速機構は
ある意味GT-Rのターボや4WDとなぞらえることができると考えます。
技術第一主義の日本らしい一面がヒエラルキーの律を破ります。
刀や鎧などでもわかるように
技術の素晴らしいものはデザインが入らなくても美しいと言う感性は
貴族ではなくサムライが治めてきた日本という国の特殊性。
バウハウスの機能主義とはちょっと違うところ。
あちらは機能のためにデザインが入りますから。
デザインを入れないと言うことは性能以外の部分に質感を求めず
またサムライが使うと言うことは実用がメインであって
装飾的意味合いが薄いということ。
ヨーロッパ貴族のカツラと徳川将軍のちょんまげ。
ちょんまげは庶民でもしていた髪型です。
機能を追及するとファッションにまで影響が出る。
つまりサムライ文化において製品自体には
ヒエラルキーによる律が存在しない。
職人はそこを納めるサムライの要求に忠実に性能を上げていく。
労働厚生省の名工表彰の例を見るまでも無く
昔から日本の職人は大きいという意味でのマスの中にいます。
上があえて律を破る戦略には勝ちたいや
普及させたい、安く提供したいなど
いろいろありますが、上が作るぞと言えば
日本の職人は必ずそれに応える。
昔のヨーロッパの職人はマスにいることが少なく
その代わり作ってくれというパトロンがいました。
「作るぞ」と「作ってくれ」の違いがGT-Rやスプリングドライブと
メルセデスやパテックの差を生むのだろうと考えると
垂直と並列の産業構造の違いがヒエラルキーや文化の違いにまで
言及してしまうということを改めて思い知らされました。