10年来の恋が実りそうな予感が走った。
それは、金額を入力し入札ボタンをクリックするだけで
叶いそうな恋だった。
そして、その恋は実りをもたらし
恋人は私の元へやって来た。
名前は「セイコーインスツル ラピュータプロ」
一見すると安物のデジタル時計に見えてしまうが
実のところはポータブルコンピュータである。
2000年の発表当時はウェアラブルコンピュータと呼ばれていたそれは
PalmOS機ほどのパフォーマンスを持っているかに見えた。
確かにスペック的にはその通りなのだが一つ大きな問題があった。
この「ラピュータ」単体では文字入力ができないということだった。
たった2MBの容量しかないこれは、当用漢字が第二水準まで
記憶されてはいるが、日本語変換アプリケーションを入れておく
容量が無いのだった。
だから、PC接続キットが同梱されていてPDAとして
WindowsPCとの同期が取れるようにはなっている。
逆を返せばPC無しではほとんど何も出来ないに等しい。
ただ、そんなところがかわいく思えていたのだが
いかんせん当時の価格は49800円。
これだけ出せばPalmOSのIBM WorkPad
カラー液晶が買えてしまうという罠が待っていた。
そんな訳で当時は手に入れようという気が起きずにいたのだが
時が流れるにつれそんなバランスの悪さにときめいてしまっていた。
機能もさることながら、大きさのバランスの悪さも
気を引かれた要素のひとつ。
デジタル時計として見た場合でも
この不必要な大きさは魅力だ。
G-SHOCKと並べてみてもこれだけデカイ。
今で言うところのブサカワというやつだろう。
こんなモノをいまさらと言われるかもしれないが
やはりカワイイとしか言いようがない。
まぁ、デジタル時計が好きというのもあるのだが
これだけはそこだけでは括れない何かがある。