ショパール ミッレミリアクロノグラフ16/8331
ジャッキー・イクス リミテッド
壊れているから、との注釈付でしたが
こんな仕上げのいい時計をいただいて
眺めているだけというのも酷な話。
いただいた以上、友情の証として
意地でも直して使いたい。
ショパールの正規取扱店で見積もりを頼むと
スイス本国に送って中身を全て取り替え、総額40万円。
新品で約60万円の時計に40万円はボッタクリすぎでは?
と、考えあぐねていると
知り合いのライターさんから
「本間さんに持っていったら?」とアドバイスをいただく。
本間さんとは株式会社セイコーサービスの代表で
本間ウォッチラボラトリーという修理工房の主宰。
日本にある時計で直せないものは無いとまで言われ
機械式時計〈解体新書〉という著書もある
その筋ではカリスマといわれる方だ。
そんな御大が果たして私のような者を
相手にしてくれるのだろうか。
そのライターさんが紹介してくれるというので
本日、本間ウォッチラボラトリーへ行ってきた。
高円寺から徒歩15分くらい。
立派な住宅街の中にあるはずなのだが
なかなか見つけられない。
住所は合っている様なのだが民家しかない。
表札を見ると名前も違うしと思っていると
ガレージの奥にもう一軒の家があった。
よく見ると表札に「本間」とある。
社名と功績で勝手にビルを想像していたのだが
自宅で修理工房を営んでいるのだ。
さっそく呼び鈴を鳴らすと
御大が自ら迎えてくれた。
その玄関先を見渡すと
腕時計だけでなく、置時計や柱時計なども修理待ちをしている。
あのジャガールクルトの気温差で稼動するという
複雑機構の置き時計アトモスまでもが修理待ちだ。
総額が億単位の修理待ちの品々。
やはり見かけだけでは判断できない。
早速ショパールを見てもらうと
金額云々よりも時間がかかる修理だということだ。
全部分解し、磨きなおして組まなくてはいけないので
最低でも作業時間に連続4日は必要だという。
それを聞いただけで幾らかかるんだ?という心境に。
「10万くらいで何とかなりますか?」と聞くと
「そんなにかからないよ。せいぜい5万円」
「えっ、でも作業に4日って・・・」
「部品の浸け置き洗浄に2日かかるから」
40万円が5万円!!
正規店はボッタクリすぎではないかという話をすると
「通過するところがみんな儲けを乗せればそんなものだよ」と。
そのおかげで国際保障がつくのだから安心料なのだと。
「うちで修理しても6ヶ月保障はつけるけど
壊れたらうちで直す以外ないからね。価値観の違いだよ」
しかし、この金額で直る上に御大の6ヶ月保障。
これはかなり魅力だ。
ただし納期は3ヶ月。順番待ちが多いのだから仕方が無い。
スペースシャトルの先端、
オリンピックのメダリストがこぞって注文する砲丸投げの玉、
そして時計修理の御大。
日本のすごい職人は、見てくれの社屋より
自分の作業しやすい自宅を選ぶのだなぁと
感慨深くなった。
あなたの家の近所にも
とんでもない職人が住んでいるかもしれません。