2008年11月04日

麻布 永坂更科の鴨せいろ

時すでに11月。
もう冬の味覚が恋しくなる頃である。

冬の味覚と言えばそれこそ多種多彩にあるが
冬の入り端にどうしても食いたくなるものに
鴨南蛮がある。

昨日、このどうしても食いたいと言う病が
私を麻布に走らせた。
お目当ては永坂更科総本店。

東京で気合を入れて蕎麦を食うと言えば
もう神田の砂場かここ「永坂更科布屋太兵衛」以外考えつかない。
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写真は永坂更科布屋太兵衛のサイトより引用

永坂更科で席に着いてまず悩むのは
鴨南蛮にするか、鴨せいろにするかである。
鴨南蛮は濃厚な味と鴨の独特の脂で
寒い日にはかなり身体を温めてくれるのだが
まだ時期的には寒いと言うほどではないので
蕎麦の香りがよりいっそう楽しめる
鴨せいろをいただくことにした。

やってきた鴨せいろ。
つけ汁には鴨肉をあぶったものが入る。
まず、この鴨肉に食らいつく。
鴨南蛮や鴨せいろでは存外な肉厚。
ステーキで言うところのミディアムレア。
噛むと中から染み出す肉汁の至福。
若いコが良く使う「ヤバイ」と言う言葉が
口をついて出てしまうほど。

こんな鴨肉の入ったつけ汁はまさに濃厚で
旨みの凝縮と言うにピタリとはまる。
これをつける蕎麦も香りは負けていない。

この鴨せいろは、蕎麦とつけ汁の戦いという様相で
素晴らしい格闘技をリングサイドで観戦するかのような
力強さを感じるのだ。まさに味と香りのぶつかり合い。
しかしエンターテイメントとしてのまとまりがある
そんな楽しみと言えようか。

蕎麦を食い終えても鴨せいろの楽しみは終わらない。
つけ汁に蕎麦湯を注し、その余韻をいつまでも楽しめる。

落語の世界では、蕎麦は手繰ると言い
食い終わるとすぐに席を立つのが粋とされるが
この鴨せいろだけは例外にしてもらいたい。
この余韻と〆のお茶にじっくりと時間をかけたくなるからだ。

鴨せいろごときに、ここまで御託を並べられるうえに
この御託を吐いたほどのものの代価が2000円とすれば
この上なく安いものだと感じるのだが、いかがなものだろうか?



posted by 北森 at 15:59| Comment(0) | TrackBack(0) | グルメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月21日

ナポリタンの主役はケチャップだと主張したい。

最近、スパゲティ・ナポリタンにブームの兆しがあるようです。

このナポリタン、
源流はアマトリチャーナと言われています。
ケチャップとハムやベーコンまたはソーセージと
たまねぎ、ピーマンをいれて炒めたスパゲティだと言うことで
見た目以外はアマトリチャーナと全く別物ということは
皆様もご存知でしょう。

昨今、いわゆる昭和の喫茶店メシと言うのが流行りつつあり
その定番メニューのナポリタンがじわじわ来ているのです。
ご家庭で気軽に作れるという理由のためか
一部のスーパーマーケットではわざわざナポリタン用の
材料をまとめたコーナーができるほど。

ただ、ここでわりと蔑ろにされているのがケチャップです。
スパゲティは輸入国産と各種取り揃えられていたり
ハムやベーコンも高級品から普及品まで並んでいるのに
ケチャップはカゴメだけ。



カゴメが悪いとは言いません。むしろ最高と言ってもいいでしょう。
ですが、カゴメだけ、と言うのはいただけない。
普通に買えるケチャップでもハインツやデルモンテがあるのに。

 

ケチャップは銘柄で甘みと酸味の違いが明白。
ここにかなり好みが入ってくると思うのです。
うちなんてオムレツはカゴメでも
ナポリタンはデルモンテです。
カゴメをナポリタンに使うと食味が軽い気がしてならない。

スパゲティなぞママでも明治屋でもディチェコでもなんでもいい。
ナポリタンは微妙な麺の香りを楽しむのではないのですから。
そんなのはペペロンチーノに任せておけばよいのです。

ナポリタンにはどれがいいとか悪いとか
はっきりと言えるわけが無いのですが
ケチャップが味の大部分を占めていることは明白です。

だからこそもうちょっと光を当てて欲しいものです。
posted by 北森 at 11:07| Comment(0) | TrackBack(0) | グルメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月14日

東京で寿司がうまい第三の地域 大森

東京で寿司がうまい場所と聞かれて即答するのは銀座。
ネタもサービスも最高ですがお値段も最高。
第二はこれも言わずもがなの築地。
ネタの鮮度は最高で、値段もその辺の寿司屋と変わらないと来ている。
この二ヵ所はおおかた、あと50年はランキングの入替えが無いでしょう。

では、「第三位は?」と聞かれると困る方が多いのではないでしょうか。
店舗単位ではうまい店はそこらじゅうにありますが
地域で、と考えるとある程度のレベルの店が密集していないといけない。

私の経験で行くと東京で第三位の寿司のうまい地域は
JR京浜東北線の「大森駅」周辺。

試しにGoogleで「大森 寿司」と検索してみてください。

大森駅を中心に半径800mで
Googleマップに登録されているだけで75件!!
Googleマップに載っていないカウンターのみ5席程度の店や、
立ち食いの店まで含めると、私が知る限りこの範囲に100件はあるはず。

なんでそんなことになっているのか?
大森にはその昔、平成元年まで魚河岸があったのです。
第一京浜国道の平和島近辺、現在は大森スポーツセンターという
区営施設が建っている場所がそこです。

魚河岸が近いと言うことは自然発生的に寿司屋が増えるという
日本ではほぼ常識的な発想で考えてもちょっと多すぎやしないか?
それに魚河岸が大井埠頭の大田市場に移転してから20年。
もう淘汰されて店舗数も減ってきてもいいはずだと思います。

実は大森に寿司屋が多い理由はもう二つあります。
一つは公営ギャンブルが最寄に2つ、競艇と競馬があること。
公営ギャンブルに行くのにお金を持って行かない人は少ないですし
多少なりとも儲かれば鮨ぐらい食いたくなります。
ギャンブルが地元にお金を落とすことを裏付けるかのごとく
実は焼肉屋もかなりの数があります。

そしてもう一つは東京観光の外国人の
宿泊基地になっていると言うことです。

成田から東京ディズニーランド、秋葉原を経由して
羽田から北海道へ行く、と言うのが最近の外国人のツアーパターン。
羽田から飛行機に乗る前日に大森に宿泊というのが非常に多く
周辺にはホテルが多い。
この観光客が日本食、すなわち寿司を食いに街に繰り出すのです。

この狭い範囲に大量の寿司屋があるのですから
競争も激しいので技術もネタ質も向上する。
その上、大田市場と築地の2箇所の仕入れルートがあるので
他の地域に比べても良質のネタを安定的に仕入れることができる。
地代が安いので銀座に比べるとかなり安いし
築地辺りと比べても季節によっては安い場合もある。

偶然の重なり合いで、寿司がうまくなる条件が揃ってしまっている
それが大森の寿司屋なのです。

大森にはJRを挟んで東と西、もっと詳しく言うと南東と北西で
大きく街の雰囲気が違います。
それに合わせるかのごとく寿司屋の雰囲気も変わってきます。

南東側はそれこそ元魚河岸があった場所や競艇場方面なので
寿司屋も威勢がいいと言うかにぎやかしいというか、そういう感じ。

こちら側でのお勧めはいさ美寿し

にぎやかしい南東側でも地下に入っていくお店なので
わりと落ち着いています。週末は近所の日立やいすゞの方々が
宴会をやっている場合が多いので、これを避けるためには
平日か日曜日がいいでしょう。
特に日曜日はネタの鮮度はイマイチかもしれませんが
回転寿司並のどれでも1カン70円とかなりお徳。
こういうイベントも大森っぽい感じです。

北西側は山王という高級住宅地を控えているので
かなり落ち着いた雰囲気が魅力です。
慌しくなく、ゆっくり寿司を味わいたい方にはこちらがいいでしょう。

北西側のお勧めは美家古寿司

住宅街の真ん中の路地にあるので多少見つけ難いかもしれませんが
味はピカイチ。銀座の中級クラスには決して負けません。
マスターも寿司屋にしては物腰が穏やかで
ご夫婦でふらりと立ち寄っても落ち着いて寿司を味わえます。

実はこの美家古寿司、味と価格の両面から
私の東京寿司屋ランキングトップ10に入っているのです。

お勧め以外にも大森の寿司屋は、その膨大な店舗数により
かなりバラエティに富んでいます。

概してマイナーと言える大森に
寿司を食うだけのために行くというのも
かなりディープでマニアックな感じで面白いですよ。
posted by 北森 at 15:32| Comment(0) | TrackBack(0) | グルメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月21日

初夏の築地

先週の竹の子掘りから続いた竹の子祭りも終盤に差し掛かり
いよいよ「竹の子ご飯を作ろう」ということになったのだが
これに合わせる「おかず」、
我が家では「ホタテフライ」と決まっている。
これが新緑の季節の定番なのだ。

せっかくのホタテフライだ。これはたくさん食べたい。
ということでホタテは築地に買いに行った。

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毎度のことなのであるが、やはり築地は安いのである。
この剥きホタテは1000円で500g入っている上に当然の如く刺身用だ。
フライにするにはこの剥きホタテが一番重宝する。
養殖のホタテは通年安定してあるのだが、
この季節は何故か非常に安い。

仲買さんで買い物をする場合、価格の表示が無いことが多いのだが
今回、このホタテを買った「やまふ水産」は
全品価格表示が明記なので初心者でも買いやすい。
品揃えは近海モノと養殖モノが中心。
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せっかく来たので他のモノも見て回った。
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さすがにこの時期の王者はカツオだろうか。
なんといっても価格が一気に下がる。
釣りモノでキロ900円。
写真のこれだと1尾1800円程度。夢のようだ。
ただ、これを買って行っても家で下ろせないのが辛い。
出刃と柳刃を買うべきだろうか。

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ノドグロはとてつもない高級魚であるが
築地であれば1尾あたり1000円程度で買えることになる。
純粋に焼き魚で食べようと思えば築地で買うのがいいだろう。
店で食ったら軽く2500はしてしまうので。

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このアオリイカが出回ればもう「夏」なのである。
ちょっとコリコリした身が夏を感じさせる
刺身で食ったら美味いイカの代表だ。

これだけ見て回っても、実のところ
ホタテのほかにはタコしか買っていない。
他のものを買ってしまうとキリがなくなるので
築地へ出向く際は決め打ちで行くべきである。


posted by 北森 at 16:09| Comment(0) | TrackBack(0) | グルメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月08日

本当の麦茶の味


写真は虎屋菓寮のサイトから引用

虎屋菓寮という和菓子の喫茶店で
衝撃的な出会いがあった。

麦茶である。

家で煮出そうが、パックを買おうが、
ペットボトルで買おうが
どこで飲んでも、何を飲んでも
代わり映えしないと思っていた、麦茶。

虎屋菓寮で水の代わりに出された麦茶を飲んで
麦茶っていうのは本当はこれなんだと、考えを改めた。

その、出された麦茶はほんのり甘い。
砂糖やなにかの味付けではなく、麦の甘さだ。
そう、いうなればグレンリヴェット12年の水割りから
アルコール分を抜いたような味。

麦茶もモルトウィスキーも原料は大麦なのだから
味の本質は似ていて当然なのだが、麦茶に関しては
あまりにもおざなりに淹れていたのではないだろうか。

試しに家で、正しい淹れ方の麦茶を作ってみた。
丸の麦茶を使い、裏面の説明書どおりに煮だした後
1時間ほど麦茶の玉を入れたまま蒸らす。

虎屋菓寮ほどではなかったが、確かに甘くなる。
水で淹れる麦茶やペットボトルにはない味わいだ。

考えてみれば、祖母が生きていた頃は
これに近い麦茶が冷蔵庫に
普通に入っていたような気がしてきた。

ちょっとした手間は非常に重要なのである。
posted by 北森 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | グルメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月21日

マンダリンオリエンタル東京のアフタヌーンティー

親戚の娘さんが最近、ホテルのアフタヌーンティーにハマっている。
普段は私の妻と彼女が連れ立っていくのだが
今日に限って風邪を引いてしまい
予約がもったいないという理由で代わりに私が行くことになった。

マンダリンオリエンタルのラウンジは、割とよく行くのだが
アフタヌーンティーは初めてである。

アフタヌーンティー自体は昨年、
リッツカールトン東京へ
件の彼女と私たち夫婦で一緒に行ったのだが
コストパフォーマンスに若干不満を抱いていたので
マンダリンオリエンタルには期待したいところだ。

マンダリンオリエンタル東京は
日本橋三井タワーの38階にフロントがある。
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マンダリンオリエンタル東京は
外資系ホテルの中にあっても決して大きなホテルではないが
最上階がフロントの強みか天井は高く
ロビーにはかなり背の高いフラワーアートが飾られる。
さすが、この辺りではこれ以上に高い建物が無いので
かなり見晴らしがいいのもポイントだ。

ラウンジはこの38階にあり、窓からは皇居から新宿方面が
そして秋葉原、上野方面が一望できる。

アフタヌーンティーで席を選ぶなら
お勧めは上野側が見える北側。
皇居の見える西側は西陽が強く
この時期であれば午後3時まではかなり眩しい。

席に着くとまずお茶のメニューが出される。
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驚いたことに、このメニューに書かれているもの全てが
チェンジとお替りが自由だということ。
リッツカールトンは
ポットで出されたものを飲み切ると
追加は有料だっただけに
マンダリンのコストパフォーマンスのよさが覗える。
せっかくのアフタヌーンティーなので
普段いただいているのコーヒーをやめて
マンダリンオリエンタルブレンドという中国茶ベースの
ブレンドティーをいただいた。
テーブルに置かれた瞬間から漂う香りが印象的。


スターターはこの4品。
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詳しい内容は割愛させていただくが
どれも一級のフィンガーフードである。
特に右下のチーズが乗ったブルスケッタは特筆。
親戚の彼女曰く「これ、ヤバくね?」
いくら年齢が若いとはいえ
場所が場所だけに言葉は選んでもらいたいところだが
それほど美味い一品であったことは伝わるのではないかと思う。

次はスコーン。
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焼きたてのスコーンはふっくらとやわらかく
ボソボソしたスコーンしか知らない身には感動だ。
これもお替りがいただけるというので
つい、チョコレートスコーンをお替りしてしまった。
男性が同席しても立派に腹を満たしてくれる
という配慮がたまらない。
逆に言えば、ここへ来る際は
ランチを遠慮しておいたほうが楽しめる。


そしてスイーツ。
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いかにもオリエンタルなワゴンに色とりどりに並ぶ。
ちょっとした折り紙飾りが和みを与えてくれる。
どれもが素晴らしく美味いのだが
特に一番下の左側のシュークリームが素晴らしい。
カスタードクリームへの考え方が変わるほど
香りが高く濃厚であるが甘さはかなり控えられている。

アフタヌーンティーは午後をゆったりと過ごすための
英国式文化であると聞くが
全体的に、かたちにこだわり過ぎない適度な感じが
非常に好感が持てる。
スタッフの対応の素晴らしさは、
さすが伝説のサービスを謳うだけのことはある上に
世界中のマンダリンオリエンタルの中で
一番の高層階にあるという特徴が
このアフタヌーンティーをオンリーワンにしている。

そう、これはマンダリンオリエンタル東京でなくては
味わえない午後のひと時なのだ。

そんなアフタヌーンティーセットがサービス料込み3850円。
コーヒーがお替りができるとしても
サービス料込み1320円だということを考えると
かなりのコストパフォーマンスである。

そうじてこのセットをオーダーしているのは女性ばかりであったが
これを女性だけのものしておくのはもったいない。
男性も積極的に味わったほうがいい、と真剣に考えたのであった。
posted by 北森 at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | グルメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする